相変わらずif多めです。






*** ワガママ date show ***




「あぁっ、可愛い、これも似合う〜♪」
「そ、そうですか?」

お店に陳列された帽子を手に取り、椎菜にかぶせ、ウットリとする。
さきほどから、この調子でお店を何軒もまわっている。
椎菜はどんなものでも似合い、とにかく可愛いので見ているだけでも飽きない。

いわゆる、ウィンドウショッピングってやつ?
これって、デート……かな。

そろそろ、見てるだけー状態なあたしたちを店員が睨んで……

「あはは、椎菜、そろそろ移動しよっか?」
「はいっ」

元気良く返事をする椎菜ににっこり微笑み、あたし達は、お店の外へと移動した。

「うーん、少しゆっくりしたいわね……ここで少し休む?」

少し歩くと、人通りの少なめの公園に辿り着いた。
公園ならば、座るところぐらいなら……飲食店に入っても良かったのだが、せっかく椎菜とふたりきりなのだから(一緒に住んでいるから、いつも一緒なのだけれど。)出来れば騒々しい場所よりも、静かにすごしたいと思った。天気も良いし。

「はい、良いですよ。僕はマスターと一緒ならどこでも楽しいし……」

そう言って、椎菜は嬉しそうに笑う。
………不意打ちだ。

こんなことを言われたら、あたしも嬉しくなっちゃ……
「………にやってんだよ!ばーか!」

………。

なにやら、あまり遠くない位置から、男の乱暴な声が聞こえた。
ひとがせっかくしあわせに浸っているというのに!

「もー!なんなのよ!」
「あ、ちょっとっ」

抗議をしようとしあわせな気分をぶちこわしてくれた声の主を探す。

……いた。しかも!

「ふええーん……」

しかも、その男は、泣いている女の子の手を、無理矢理引っ張っているではないか。
さらに、その女の子の顔には傷が……

「傷が……嫁にいけなく……ぞ……って俺が………」

会話は少ししか聞こえないけれど。
……嫁にいけなく、俺が?

俺がお嫁にいけない身体にしてやるぞ、げへへ、とな?
顔に傷………暴力!?無理矢理!?

「ちょっと、ちょっと、ちょっと、アンタ!!」
「ああ、もう、ま、マスター!!」
椎菜の制止を無視し、思わず、その現場へ飛び出すあたし。
「アンタ、その子嫌がってるじゃない!泣いてるわよ!」
「は、あんた……誰」
「ふええ……っ」

あたしのしあわせをぶち壊した男に手を掴まれている少女は、情けない声をあげ、がくがく震えている。
(あぁ、かわいそうに……)
あたしは、男の手をぺちん!と叩き落とし、泣いている女の子を抱き寄せる。
すると、女の子は、あたしの腕の中で、ビクリとまた震えた。

「ちょ、な?!」
「あぅ、あぅ〜っ」
「あぁ、もう大丈夫だから、お姉さんが助けてあげるからっ」
「ま、マスター……」

心配そうに見守る椎菜に、グッ!と親指を立てる。

「ほんと、おまえ何なの?!」
「何なのじゃないわよ、ガキのくせにナマイキだし!」
「は?ガキとか、ふざけんな!!」
「どうせ高校生でしょ?」
「っちげえええええええ!!!」

バトル勃発。
静かな公園に大きな声が響く。

「マスターをいじめないでください、僕も怒りますよ!」

口論をつづけていると、今まで黙っていた椎菜が、あたしをかばうように飛び出した。
あぁ、なんて良い子なの!
(そのときに「どっちがいじめられてんだ……?」と相手の男が呟いたのは聞こえなかったことにする。)

「椎菜は優しいね……女の子を無理矢理なんてサイテー!アンタも椎菜を見習うべきだわ!」

その言葉に反応したのは、男の方ではなく、あたしの腕の中にいる女の子だった。
ぷる、ぷる、と更に大きく震えはじめ……


「ハルカさまはわたしが嫌がることなんて、し、しませんっ……は、ハルカさまを悪く言わないで下さい、わ、わたし、わたしも怒りますっ」


………。


「……へ?あれ、無理矢理あれこれされそうになってたんじゃないの?」
「……よくわからないけど、多分違います」

「あれ、さっきのは?」



解説。



「あぁ、また転んだ!気をつけろってあれほど……顔に傷出来てるじゃねーか」
「ふえーん」
「気をつけろよ、顔に傷残ったらお嫁にいけなくなるぞ、…って…俺のだから、俺がもら……から…あんまり関係ないけど……」
「……ぅう?」
「な、なんでもねーよ!!手、繋いでやる……今度は転ぶな」



解説終了。



あ、あ、あっまーあああああいっ!

あれ、なにこれ?あたしの勘違い?


「ってことで、それ、俺の女だから返してくんない?来い、久能」
「は、ハルカさまぁ〜……」

さっきまでぶるぶる震えていた女の子が少し嬉しそうな顔をする。

……なんか、この子……

「……イヤ」
「……は?」
「返さない」

「だって、この子、めちゃくちゃ可愛いんですけどー!!」

ぷるぷる震えて、小動物みたいで!!

「久能ーっ」
「びえっ……ええん……ひゃあっ」

「ちょ、マスター、いくら人がいないとはいえ……こんなところで……」

「あぁ、ちっさいけど、触り心地バツグンね〜うふふ、この子可愛いよ、椎菜〜」
「きゃ、あう、あ、変なところ、さ、さわらないでくださっ……ひゃん、ハルカさまぁっ」


「あぁ…あの……あちらの男の方、真っ赤になって口ぱくぱくしながら固まっちゃってますよ……」



*****



「あはは、ごめんね、椎菜、お騒がせしちゃって」
「いえ、別に気にしてません……でも、いきなり知らないひとにセクハラするのはどうかと……」

そう言って、お互いに苦笑いする。

「今日は許してもらえたけど、こわいひとだったらどうするつもりだったんですか……」
「大丈夫、大丈夫だって」

「もう……僕、ハラハラして……マスター、いっつもすぐに飛び出して行っちゃうから……僕がしっかり守れるように男らしくならないと」
「うーん、椎菜、かっこよかったよ?男らしかったよ?」

あの時。
「マスターをいじめないでください」って飛び出したとき。
あたし、すごく嬉しかった。

「いえ、まだまだこれから、これから、ユカリさんがデート中にどこかへ飛び出していかないように」


「他のことが目に入らなくなるくらい、夢中にさせてあげるから、ね、ユカリさん」


ふわりと微笑む椎菜。
あたしは、その微笑みに、クラリ、と眩暈を覚えた。


「わぁ、ユカリさん、鼻血鼻血!!!」







椎菜×ユカリだと言い張る。