これにて、一件落着!と思われた、一日の終わりごろ。
帰宅した俺には、大盛りのカレーと、大きな試練が待っていた。

……すっかりわすれていた!
久能を連れて帰宅すると、まず視界に飛び込んだものは大盛りのカレーだった。

大盛り……もとい、特盛り……超特盛り?カレーを見た久能は、
一瞬目を丸くしたが、結の作ったものだと気付くと、パクリと口に入れた。
それから、「うぅ、結さんのカレーおいしいですぅ、わたしなんてわたしなんて」と、ジメジメといじけた久能をなだめることは、簡単ではなかった。


…………


「良いって、これから練習すれば良いだろ?俺も、付き合ってやるし」
「うぅ……そうですよね、それに、ハルカさま、さっきもっとワガママを言って良いって言いました」
「う、うん、そういうことだ」

とりあえず、少し落ち着いたらしい久能。
しかし、本当の試練はここからだった。

「あのぉ……他にも、さっそく、言って良いですか?」
「…う…ぅうん?」


「ハルカさまと、いっしょのお布団で…………」


「なんだよ、別にそれくらい………」



「って、え?」



こんなことを言い出したのだから。



「ハルカさまと、いっしょのお布団で寝たい、です……!」




*** 眠れぬよるに つかまえて ***




そりゃあ、一緒に暮らしてるし、ずっと一緒だけど。
ふにゃーっと顔を緩めながら同じ布団に入ってきた鶺鴒、久能により、葦牙、鷸ハルカ、動揺中。

「いや、ちょっと、それは…」と、断ろうとしたけれど、またいじけられても困るし、さらに、
「キスしました、俺の女って言いました……なのに……だめですか?」なんて涙目で言われると……!

動けない俺。
久能の方向とは逆方向しか向けない俺。

もういっそ、ふにゃふにゃのうたでも歌ってくれ……
ふにゃふにゃのうたで……祝詞……粘膜接触…ねんまくせっしょく……

(いやいやいやいや、それはまずい。いろいろとまずい!!)

それに、こんなくだらないことで、弱い久能の身体に負担をかけることはしたくない。
……変な意味ではなく。

(『祝詞を使わせること』の負担。祝詞でだからな。ごごご誤解すんな!)


「ハルカさま…、おきてますか?」

突然聞こえた声に、思わずビクリとする。

「……寝てるのかな…」

だが、気付かれなかったようで、なぜか少し安心した。
とりあえず、ここは、必殺…狸寝入りだ……!

「わたししあわせです……こんなに、くるしくなったり、どきどきしたりするの、はじめてで、嬉しくて」

そう言って、久能は俺の背中に抱きつき……

「はじめてのキスも……全部、わたしのはじめて、ハルカさまが持っていっちゃいます」

ちょちょちょ、ちょ、
背中に、ひかえめだけど(いや、佐橋の鶺鴒たちが異常なんだ!)
やわらかいものがあたってます……が?

「わたし、これからも、はじめての相手は全部ハルカさまが良いです……」

なんてことを言い出すんだ、こいつは。
ああああ……もーっ!

「久能、俺、俺っ、もうっ、」


………あ?


「すぅ……すぅ……」

「ね、寝てる……」


ああ……。

そうだよな。
佐橋の鶺鴒たちに、やっぱりおもちゃにされてたみたいだし。
疲れてるんだよな。

無防備に眠る久能。
そんな久能を見たら、なんだか色々と……脱力。

「おやすみ、久能……」


起こさないように、小さく囁き、しあわせそうに眠る久能の額にそっとくちびるをよせた。



*****



「……かさまぁ〜」

「ハルカさまぁ〜」


ゆさゆさゆさゆさ。


「う、うー…」

「起きてください〜…」

「今日も…休みだから……まだ……」

「起きてください〜っ」


ゆさゆさゆさゆさゆさ。




「あー、くそ!こんなに眠いの…誰のせいだと思ってんだよっ!!」


「??ふぇ?ええ??」




すみません。なにも言えません。
ほんとすみません。
性欲をもてあますとか言わせなかったことだけ褒めてあげてください。